- 子どもが正直に話してくれない・・・
- 何度も言っているのに直さない・・・
- 口をきくことも少なくなってきた・・・
お子さんの態度や行動に悩まされることはありませんか?
そんなときに1つふりかえってみてください。
「最後に子どもに向かって、自分の経験、気持ちを話したのはいつだっけな?」
何か思い当たる事はありましたか?
あってもなくても、これから機会があったら話してみてください。
「自分のことを他人に伝えること」は、心理学の分野では「自己開示」と言うそうです。
その自己開示は対人関係づくりに良い影響があると言われています。それは、子どもとの関係作りでも同じだと思います。
今回の記事は、
「保護者の話が子どもに与える影響は?」
「自己開示と自己肯定感の関係は?」
「どういうことを話せばいい?」
の3本立てで、「子育てと保護者の自己開示」について教員だったころに学んだことや、読んだ論文を参考に書いています。
結論から一言で言うと
自分の話をすると、子どもとの関係がよくなるかも
私が自分のことを話そうと思っていた理由
いきなりですが、わたし「HaHa」って言う漫画が大好きなんですよ。作者の押切蓮介さんが若いころの母のことをマンガにした作品です。
おかあさんの働いていた頃のエピソードや家族(作者の祖父、祖母)との関係が描かれます。
マンガとして面白くて「うわすげえおかあさんだな・・・」と思いながら読んでいたのですが、読み終わって、こう思いました。
「うちの母は自分が生まれる前、何してたのかな・・・」
この本を読んで、私は両親と何年も一緒に生活をしてきたのに知らないことばっかりなことに気がつきました。
それで気になっていろいろ聞いてみましたが、いまさら恥ずかしがってあんまり教えてくれませんでした。でも前よりは自分の両親のことを知ることができてうれしく思ったのを覚えています。
両親との関係は今でもそんなによくありませんが、「どんな人か分からない人のことを好きになるワケないな」と子ども時代のことをふりかえることがあります。
そんな経験から自分が先生になったら「まずは子どもには自分の話をして、自分のことを知ってもらおう」と思いました。きっと相手との関係を良いものにするだろう!となんとなく感じたからです。
「自己開示」という言葉はまだ知りませんでしたが、教員になって子どもと話すときには「自分はこうだった」「自分はこう思う」といちいち言葉にするようにしていました。
これから紹介する自己開示のメリットをなんとなく感じていたのだと思います。
自己開示について
私が自己開示について知ったのは、学校の研修です。
生徒理解のための手法として紹介されていました。非構成的グループエンカウンターという方法の体験を通して、自己開示のやり方や効果を勉強していくという内容でした。
自己開示を行うことのメリットについては様々な研究がされています。中には、「母親と子ども、学校の先生と生徒の関係で行う場合はどういう効果があるか?」といったものもあります。参考文献は最後にまとめてあります。
自己開示を行う親のメリット「親の話が子どもに与える影響は?」
話す方、聞く方、どちらにも良い影響がありますが、話す側のメリットをまず書いていきます。
- 気持ちがすっきりする
- 心に留めていたことを口に出すと、気持ちが楽になる
- 不安が減る
- 悩みや思いが自分だけのものではなくなり、不安が減ります
- 相手も自己開示を行うようになる
自己開示は贈り物のようなものです。自己開示をすると相手はお返しをしてくれるようになります。これを自己開示の返報性と言うそうです。
相手も自己開示をしてくれるようになると、悩みや思いを話してくれるようになります。
- 親密になる
- お互いに話をするようになると理解が深まり、仲良くなります。
- 相手の情報を得られる
確かに私もよく自分の話をしていましたが、子どもたちも自分の話をしてくれていたように感じます。
逆に話をされる子どもにはどういう良いことがあるでしょうか?
自己開示される子どものメリット「自己開示と自己肯定感の関係は?」
- 親に自己開示をするようになる
先ほど書いたように、自己開示をされると、お返しに自己開示をするようになる傾向があります。これは親子関係でも見られるそうです。
自己開示をするようになると、上に書いた「話す側のメリット」を受けられるようになります。
- 自己理解が深まる
自分のことをどうやって話すか考える、その話を聞いた相手の反応を見る。
この2つのことを通して自分についての理解が深まります。
加えて自己開示をよくする人は下のような特徴があったそうです。
- 自己評価が高い
- 孤独感が低い
- 対人関係が上手い
- 幸福感が高い
ただ、ここで注意しなければいけないのは「じゃあ自分の話をさせよう」と思って、無理やり話をさせてはいけないということです。
自己開示の注意点「自分が話したい時に話したいことを」
今回はあくまで、「自分が子どもに話をすること」がテーマです。
自分が話をしてみて、上に書いたような良いことがあったらいいなくらいに思っておいてください。
私もよく自分の話がしたいときにはしますが、研修で初対面の人に向かって「将来の夢を話しなさい」と言われたときはキツかったです・・・
確かにその場は打ち解けたかもしれませんが、家帰ったら手、震えてました。人見知りなんです。
強制したら逆効果、お子さんには無理やり話をさせたりしないでくださいね。
そのうえで、ぜひご自分の話をしてみてください。
最後にこんな話をしてみたら?という例を紹介します。
私がよくしていた自己開示の話題「どういうことを話せばいい?」
「じっくり向かい合って話す」というよりは、雑談やひとこと付けたして言うことが多かったです。
話したいことを話せばよいので別になんでもいいんですが、説教はあんまよくないです。楽しいのが良いです。
なにか狙いをつけて話すなら、たとえば・・・
「最近流行ってるから鬼滅の刃読んだんだけど面白かったよ、見たことある?」
ただの感想、でも言う。はい、いいえで答えられる質問をつけやすい。
「職場体験かあ・・・、自分の時はパン屋に行ったなあ、それでこういう面白いことがあって・・・」
子どものころの経験。やる気ややる意味が伝わるかも、説教にならないように注意。
「掃除ってあんま好きじゃないけど、大人になって上手いと結構ほめられるんだよね。バイトでさ・・・」
子どもにとっては知らない面を知ることができて、自分の将来に役立つかもしれない話。
こんな感じに話していました。だからどうなったっていう効果は見てもわかりませんが、無駄じゃないと信じています。
ざっくりと自己開示に使える話題を紹介していきます。なんとなく下に行くほど、プライベートな内容になっています。プライベートな話を共有するほど、親密になりますが話す人の心理的抵抗も大きくなります。話したくないことは無理して言う必要はないです。
好みの話
はい、いいえで答えられるもの(りんご好きなの、とか)
AかBかで選べるもの(犬派、猫派でいうと犬派!とか)
好きなこと、もの
苦手なこと、もの
自分の生い立ち、暮らし
休みの日何をしていたか
子どものころの話
仕事の話
性格の話
友達のこと
考えていること
ニュースについて思うこと
約束やきまりについて
悩み、不安
願いや夢
クリスマスや誕生日にほしいもの
お金の話
大切にしているもの
将来の夢
まとめ「時々、自分の話をしてみよう」
「自分の話をすることが、子どもに良い影響を与えるかもしれない」ということについて書いてきました。
自己開示はする人にもされる人にも嬉しいことです。
反抗的なお子さんにははじめは聞いてもらえないかもしれません。
しつこくない程度を探りながら自分の話をしてみてください。
お互いの気持ちや意見が話し合える関係が作れるように応援しています。
同時に相手の話を聞いてあげることも大切です。
合わせてご覧になってください。聞くことについて書いています↓
元通級教員が不登校、発達障害の子どもと関わるのに一番役立った本
それでは最後までお付き合いいただきありがとうございました。
【参考文献】
(1)池田智子. “教師と児童・生徒の自己開示研究における課題.” 安田女子大学紀要 42 (2014): 59-68.
(2)小口孝司。「母親の自己開示と養育態度が子どもの自己開示と学級集団への適応に及ぼす効果(<特集> 『対人影響過程における自己』)。」社会心理学研究 6.3(1991):175-183。
(3)小野島萌. “青年期の親子間コミュニケーションのあり方: 青年の発達と Olson の円環モデルの視点から.” お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要 18 (2017): 37-45.
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