こんにちは、元通級担任のひなせです。教員だったころよく生徒と作業学習の時間にプログラミングをやっていました。勉強はできないと逃げ出してしまうのに、プログラミングだとうまくいかないときに解決しようと必死になるんですよね。
「発達障害とプログラミングは相性が良い」
と言われることが多いです。「果たして本当にそうなのか?」今回は考えてみたいと思います。

結論から
人による。
でも、全員やってみる価値ある。
と思います。
そう思う理由は、ざっくりこの2つです。
①ハマれば将来、仕事になる
②ハマらなくても論理的思考力をつけるトレーニングになる
物事を論理的に考える力は、人生で「良い選択」をしていくために役に立つので、すべての子どもたちに身につけてほしい力です。ただ、プログラミングの業界では発達障害の子の特性が活きて、他の人より活躍できるかもしれません。
では詳しく、説明していきます。
※あくまでも今回の記事は私の体験をもとにした考えです。すべての子どもにあてはまるわけではありません。可能性のひとつとして参考にしていただければと思います。
発達障害とプログラミングの相性が良いと思われる理由
特性が長所として活きる
学校や家庭では悪いとされる特性も、とらえ方によっては長所に代わります。
発達障害の方によくみられる、
- 物事を言葉通りにとらえる
- 細かいことが気になる
- こだわりが強い
- 夢中になるとやめられない
- 集団生活が苦手
といった特性も、プログラミングの世界では、
- プログラムは言葉通りにしか動かない
- 細かい違いに気が付ける
- こだわってしっかり作りこむ
- 長時間の作業も苦にならない
- 一人で作業に没頭できる
というようにとらえることができます。
プログラマーはパソコンに向かってコードを打ち込みます。プログラムはその命令通りにしか動かないため、決まり通りに制作することが重要です。また、上手く動かなかった時には、間違いに気が付いて直すことが求められます。
こういったプログラマーの仕事に求められる力と発達障害の人がもつ特性が合うことが多いようです。
実際に、IT業の盛んなアメリカのシリコンバレーではアスペルガー症候群は「シリコンバレー症候群」と呼ばれるほどで、発達障害のあるプログラマーが活躍しているそうです。
「論理的思考力」を伸ばせる
かといって、発達障害のある子にプログラミングを勧めるのは「将来プログラマーになればいい」と思っているからではありません。
社会で生活していくうえで、とても役に立つ力が付くと思っています。
PCはプログラムされた通りにしか動きません。感情的になることもパニックを起こすこともありません。思い通りに行かないこともミスが起きることも理由があります。
その理由を考え、「やりなおし、また失敗し、また考え・・・」とくりかえすうちに論理的思考力が身についていきます。
「なんでうまくいかないんだろう?」と考えるクセをつけるのは社会生活を行っていくうえでも役に立つ力です。論理的思考力は前向きに幸せに生きていくために、大変役立ちます。(クリティカルシンキングなどと言われることもあります)
「自分はなにをやってもダメだ」
「またパニックになってしまった」
から
「なにならできるかな」
「次はどうしたら避けられるだろう」
と対策や原因、改善案などを考えられるようになる力です。
- 失敗したとき、違うやり方を考える
- 上手くいかなかったときに調べる
- 自分でできないと気が付いたら、人に教わる
といったプログラミングの学習を通して、論理的思考の練習が行えます。
確実に「成功体験」できる。人を喜ばせる体験も。
私たちはPC上で遊べるゲームを作っていました。休み時間に完成したゲームを他の子に遊んでもらうと、みんなとても楽しそうでした。「人を笑顔にする経験っていいな」と思ったのをよく覚えています。それから一緒に作っていた子はますます熱心になりました。
発達障害のある子にはできるだけたくさんの「ほめられる経験」「成功体験」をつくってほしいです。
論理的思考力が身についても、その力を発揮するためにはエネルギーが必要です。そのエネルギーが「自信」です。
学校で、勉強で、ほかの子との関わりで、発達障害のある子は自信を失いまくっています。他の人に感謝される体験も少ないです。
プログラミングはきまり通りにやれば必ず完成します。失敗しても直せば、また挑戦できます。あきらめなければ必ず命令通りに動くようになります。
部活の大会みたいに人に勝たなくていいし、料理みたいな取り返しのつかない失敗もありません。完成して上手に動くところを自分でも見られるし、周りに褒められることもあります。
確実に成功して「自信」をつけるためにもプログラミングは良い教材だと思います。
(あきらめたり、機械壊したりしたら完成しませんが・・・)
プログラミングは小学校、中学校と授業で扱う分野となったので、そこでいいところが見せられれば学校でも活躍の場になるかもしれませんね。
「他のことにも熱心に」ハンカチ理論
はじめは私が操作方法を教えていたのですが、だんだんと自分で調べ方もわかるようになって、私の助けがなくても新しい技術を身につけていきました。
久しぶりに質問されたと思ったら、「この英語どういう意味?」って、英語の説明サイトを見ながら何かを作っているんです。プログラミングの勉強をしているうちに、調べる力をつけて、英語の勉強までしていました。それまで散々嫌がっていたのに!
ハンカチ理論は、「机に広げたハンカチの真ん中をつかんで持ち上げると、周りの部分も少しずつ一緒に持ち上がる」様子を成長にたとえた話です。
要は「一点(長所や特技)を伸ばすと、それにつられて他の能力も伸びていく」ということです。
プログラミングも学ぶうちに、
- Google検索がうまくなり調べる力がついた
- 英語のサイトを見て、単語を調べた
- 装飾に漢字を使う
- 物の制御に数学の知識を使う
と知らず知らずのうちに他の分野の力も使っていました。「宿題だから」とか「やりなさい」と言われたからとかではなくて、自発的に「必要だから」学んでいます。そのほうが定着しやすいです。これはとても良いことだと思います。
これはプログラミングに限った話ではないです。得意なものがあったら伸ばしていくと他のことがついてくることがあるかもしれません。
プログラマーは発達障害にとっても働きやすい
最後に就職についてです。プログラミングが本当に気に入り、将来の仕事にしたくなった場合にもメリットがたくさんです。
雇用がある
現在、日本ではプログラマーが不足しています。今の子どもたちが大人になる10年後、20年後にもIT業界がなくなることはないでしょう。AIの時代と言われていますから、ますます需要が伸びていくかもしれません。
ライバルが少なく、合わなければ違う会社を探せるというのは、発達障害のある子にとっては良い点ではないでしょうか。
働き方を選べる
会社に雇ってもらっても、フリーランスで仕事をすることもできます。クラウドワークスやランサーズなど仕事を個人で引き受けるサイトはどんどん増えています。個人営業にすれば働く時間や働く場所も自分に合わせやすいです。
人間関係やコミュニケーションに悩みを抱える人でも、自分に合った働き方を見つけやすいです。
積極的に採用しているところがある
プログラミング業界には、発達障害の人を積極的に採用しようとしている会社もあります。無料で研修を受けられたり、支援が受けられたりする場合もあります。
少し前ですが、国や地域でも取り組んでいます。
参考:総務省 発達障害者プログラマーの育成と就労に繋げる支援とメンターの育成
総務省|若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業|発達障害者プログラマーの育成と就労に繋げる支援とメンターの育成
まとめ
発達障害の子どもとプログラミングについて書きました。発達障害といっても、人それぞれ「合う、合わない」は違います。ちょっとやらせてみて、合っていそうだったらぜひ頑張らせてあげてほしいです!
自由研究や自宅学習でプログラミングを行うなら、手先も使うロボット・プログラミング教材がオススメです↓あわせてご覧ください。

最後に一言
恋愛もコミュニケーションもプログラミングで上手になればな・・・
コメント